口腔ケアが肺炎を防ぐ 高齢者の命を守るお口の話
皆様、こんにちは!院長の大内です。
「歯を磨くことが、肺炎を予防する」と聞いたら、どう思いますか?大げさに聞こえるかもしれませんが、これは医学的に証明されていることです。
今日は、高齢の家族を持つ方にもぜひ読んでいただきたい、口腔ケアと誤嚥性肺炎の話をします。
■ 肺炎は今や「三大死因の一つ」
厚生労働省の統計によると、日本人の死因の上位は1位ががん、2位が心疾患、そして肺炎が上位に入っています。特に注目すべきは、肺炎で亡くなる方の96%が65歳以上の高齢者だということです。
高齢者の肺炎の7割以上が「誤嚥性肺炎(ごえんせいはいえん)」です。これは、細菌を含む唾液や食べ物が誤って気管や肺に入り込むことで起きる肺炎です。
■ なぜ誤嚥が起きるのか
私たちが食べ物を飲み込む時、気道が閉じて食道が開く「嚥下反射」が瞬時に起きています。また、気道に異物が入った時に強くせき込んで排除する「せき反射」も備わっています。
加齢や脳血管疾患・認知症などによってこれらの反射が低下すると、食べ物や唾液が気道を通じて肺に入りやすくなります。特に寝たきりや要介護状態の方はリスクが高まります。
■ 口腔ケアで肺炎の発症率が39%低下
ここで重要なデータをご紹介します。
歯科医師の米山武義氏の研究によると、「介護者が毎日の口腔ケアを行い、歯科医師等が週1〜2回の専門的な口腔ケアを実施したグループは、しなかったグループと比べて肺炎の発症率が39%低く、死亡率は約53%低かった」という結果が出ています。
なぜ口腔ケアが誤嚥性肺炎の予防になるのか、理由は2つあります。
一つ目は、口の中の細菌を減らすことです。誤嚥が起きても、口の中が清潔であれば肺に入り込む細菌の量が少なくなります。どんなに気をつけていても睡眠中に少量の唾液が気道に入ることはありますが、口の中が清潔であればそのリスクを大幅に下げられます。
二つ目は、口への刺激が嚥下機能の回復につながることです。口腔ケアによって口や舌が刺激されると、飲み込む力が改善して食事が進むようになり、栄養状態が向上します。栄養状態が良くなると免疫力が高まり、肺炎への抵抗力が上がるという好循環が生まれます。
■ 口腔ケアは医療費の節減にもつながる
誤嚥性肺炎で入院すると、検査・投薬・入院日数が増えるため、1人あたり100万円以上の医療費がかかるとも言われています。
適切な口腔ケアによって肺炎を予防することは、患者さんとご家族の負担を減らすだけでなく、医療費の節減にもつながります。
「歯医者に定期的に通うことが医療費を下げる」という話をこのブログでもしてきましたが、高齢になればなるほどその効果は大きくなります。
■ 高齢の家族がいる方へ
「親が最近、食事中によくむせるようになった」「施設に入っているけどお口のケアが心配」という方は、ぜひ一度ご相談ください。
訪問歯科診療や、お口の機能訓練(口腔リハビリ)という選択肢もあります。「歯の治療」だけが歯科医院の仕事ではありません。
■ 若いうちからの口腔ケアが、高齢になってからの誤嚥性肺炎を防ぐ
誤嚥性肺炎は、高齢になってから突然起きるものではありません。若いうちからのお口の健康維持が、高齢になってからの嚥下機能の維持にもつながっています。
歯を多く残していること、口の周りの筋肉がしっかりしていること、唾液がしっかり出ていること。これらはすべて、将来の誤嚥性肺炎リスクを下げる要素です。
「今の自分には関係ない話」ではなく、今から始めるお口のケアが、10年後・20年後の自分を守ることにつながっています。
それでは、次回の更新もお楽しみに。
