歯石を取るだけで、菌が全身をめぐる お口の細菌と全身の怖い関係
皆様、こんにちは!院長の大内です。
少し驚くお話から始めさせてください。
日本赤十字社の公式ホームページには、こんな記載があります。「出血を伴う歯科治療(歯石除去を含む)を受けた方は、治療日を含む3日間は献血をご遠慮いただいています」。
その理由として「抜歯等により口腔内常在菌が血中に移行し、菌血症になる可能性があるため」と明記されています。
歯石を取るだけで菌が血液の中に入り、献血を3日間控えなければならない。それほどお口の中の菌は、私たちが想像するよりずっと簡単に全身へと広がっていくのです。
■ お口の中は、想像を絶する数の菌がいる
大人の口の中には、300〜700種類もの細菌が生息しています。数だけでなく、種類もこれだけ多いのです。
その数を見ると驚きます。歯をよく磨く人で1000〜2000億個、あまり磨かない人では4000〜6000億個、ほとんど磨かない人ではなんと1兆個もの細菌がすみ着いています。
「1兆個」と言われても想像しにくいかもしれませんが、日本の国家予算が約100兆円であることを考えると、その桁の大きさが少し伝わるでしょうか。それだけの菌が、歯磨きをしないお口の中には存在しているのです。
■ 菌はいつから口の中にいるのか
以前は「お母さんのお腹の中は無菌状態で、赤ちゃんは生まれてから菌に触れる」と考えられていました。しかし最新の研究では、妊娠中のお母さんの羊水や胎盤からもお口の細菌が見つかることが分かってきています。つまり赤ちゃんはお腹の中にいる段階から、すでにお母さんの菌に触れている可能性があるのです。
また、母乳の中にもお母さんの唾液と同じ細菌が存在することが分かっており、離乳食が本格的に始まる前の生後4ヶ月頃には、すでにお子さんのお口の中にはお母さん由来の細菌が定着しているというデータもあります。
お母さんの口の中に虫歯の原因となるミュータンス菌が多いと、それがお子さんに影響することも報告されています。「子どものお口の健康を守るためには、まず親御さんのお口を清潔に保つことが大切」というのは、こうした背景があるからです。
■ お口の中には、恐ろしい菌も潜んでいる
口の中に存在する細菌には、カンジダ菌・黄色ブドウ球菌・緑膿菌・肺炎桿菌など、全身疾患の原因となる菌も含まれています。
通常は唾液の自浄作用や免疫の力でコントロールされていますが、加齢によって唾液の分泌量が減少したり、体の免疫力が低下したりすると、これらの菌が増殖して病気を引き起こすことがあります。
高齢者に誤嚥性肺炎が多い理由の一つも、これです。口の中で増殖した細菌が、飲み込む力が弱まった時に気管に入り込み、肺炎を起こしてしまうのです。
■ 出血があれば、菌はすぐ血管の中へ
歯科治療中、特に歯石除去や抜歯の際に出血が起きると、その傷口から口腔内の菌が血管の中に流れ込むことがあります。これを「菌血症(きんけつしょう)」と言います。
健康な方であれば免疫の力でほとんど問題にはなりませんが、心臓に疾患がある方や免疫が低下している方の場合、この菌血症が重篤な感染症を引き起こすことがあります。だからこそ、赤十字の基準として歯科治療後3日間は献血を控えるよう定められているのです。
全身をめぐる血液の中に、口の中の菌が入る。これだけ菌の移行が起きやすい場所が、私たちの口の中なのです。
■ 歯だけでなく、舌や粘膜も清掃が必要
「歯磨きをしているから大丈夫」と思っていても、実は細菌は歯の表面だけでなく、口蓋(上顎の天井部分)や舌の表面、頬の粘膜にもびっしりと潜んでいます。
舌の表面に白くついた「舌苔(ぜったい)」は、その代表です。口臭の原因として知られていますが、実際には口腔内細菌の温床でもあります。
歯磨きだけでなく、舌のケアや粘膜の清掃も、口腔ケアの大切な一部です。
■ 口を清潔に保つことが、全身の健康を守る
毎日の丁寧な歯磨き、フロスや歯間ブラシの使用、舌のケア、そして定期的なプロによるクリーニング。これらは歯をきれいにするためだけでなく、口の中の菌を適切にコントロールして、全身の健康を守るための行動です。
「口の中を清潔にする」という当たり前に見えることが、実は命を守ることに直結しているのです。
気になることがあれば、いつでも川口かぼちゃ歯科へご相談ください。
それでは、次回の更新もお楽しみに。
