「ゴクン」の一瞬に、全身が動いている 飲み込む機能のすごい話
皆様、こんにちは!院長の大内です。
前回は「食べる・噛む」機能についてお話ししましたが、今日はその続きとして「飲み込む(嚥下)」についてお話しします。
「飲み込むなんて、無意識にやっていること」と思われるかもしれません。でも実は、その一瞬の「ゴクン」の中に、驚くほど精密な体の動きが詰まっています。
■ 飲み込む前に、体は何をしているか
食べ物を噛んで唾液と混ぜ合わせ、飲み込みやすい塊(食塊:しょっかい)が作られると、飲み込みの反射(嚥下反射)が自動的に起動します。
この瞬間、体の中では次のことが100分の1秒単位で次々と起こっています。
まず口が閉じます。口が開いたままでは飲み込めません。それと同時に、奥歯がほんの一瞬かみ合います。これは顎を固定するためです。顎がふらついていては、飲み込む力を生み出せないのです。「歯は噛むためだけにある」と思われがちですが、飲み込む動作にも歯はしっかり役割を果たしているのです。
次に、上顎の奥にある軟口蓋(やわらかい筋肉の壁)が反り上がり、口から鼻へ繋がる通路が閉じられます。こうして口の中が完全に密封されます。
そこへ舌が勢いよく上顎に向かって押し上がり、口の内圧が一気に高まります。この圧力で食塊が喉の方へ送り込まれます。同時に気管の入り口に蓋(喉頭蓋:こうとうがい)が閉まり、食べ物が気管ではなく食道へと送られていきます。
■ 飲み込みは「全身運動」だった
もう一つ、驚きのポイントがあります。
飲み込む時、実は呼吸も連動しています。「息を吸う→止める→ゴクンと飲み込む→少し吐く」という流れが、飲み込みのたびに繰り返されています。
ビールをグッと飲んだ後に「ハー」と息を吐く、あの感覚がまさにそれです。
呼吸を支えているのは、口や喉だけではありません。胸の筋肉、背中の筋肉、腹筋まで参加しています。たった一口の「ゴクン」も、全身が総出で行う協調運動なのです。
■ 嚥下がうまくいかないと「誤嚥」が起きる
この精密なメカニズムのどこかが狂うと、食べ物が食道ではなく気管の方へ入ってしまう「誤嚥(ごえん)」が起きます。
以前のブログで「入れ歯のお手入れ」の記事でも触れましたが、誤嚥が続くと「誤嚥性肺炎」という重篤な肺炎を引き起こすリスクがあります。
脳卒中の後遺症などで口や喉に麻痺が残ると、唇が閉まらない、舌が動かない、喉頭蓋が閉まるタイミングが遅れる、といったことが起こります。そうなると、先ほど説明したメカニズムのどこかが崩れ、食べ物が気管に入りやすくなってしまうのです。
■ 「食べる」機能にもリハビリがある
手足に麻痺が残った場合にリハビリテーションがあるように、口や喉の「食べる機能」にもリハビリがあります。
摂食・嚥下リハビリテーションと呼ばれるこのアプローチにより、一度食べる機能が落ちた方でも「食事のある生活」を取り戻すことができる場合があります。
「もう食べられないから点滴だけで」ではなく、機能を回復させることを目指す。それが、現代の歯科や医療が目指している方向の一つです。
■ お口の機能を守ることが、命を守ることにつながる
このブログでこれまでお話ししてきた「よく噛む習慣」「舌の正しい位置」「口呼吸の改善」「唾液を増やすこと」……これらはすべて、嚥下機能を健全に保つことにもつながっています。
子どもの頃から正しいお口の機能を育てることは、将来の誤嚥リスクを下げることにもなるのです。
「飲み込みにくい気がする」「むせることが増えた」という方は、加齢による変化かもしれませんが、お口の機能が関係していることもあります。気になることがあれば、ぜひ「川口かぼちゃ歯科」へお気軽にご相談ください。
「食べる・飲み込む」喜びを、一生涯大切に守っていきましょう。
それでは、次回の更新もお楽しみに。
