「食べる」は本能じゃない お口の機能は、学びながら育つものです
皆様、こんにちは!院長の大内です。
「食べる」「話す」「呼吸する」「表情を作る」。これらはすべて、お口が担っている大切な機能です。
今日はその中でも「食べる機能」に注目して、少し深くお話しします。「食べることは生まれつきできる」と思っている方も多いのですが、実はそうではないのです。
■ 赤ちゃんが「おっぱい」を飲むのは本能。でも、そこから先は「学習」
生まれたばかりの赤ちゃんが、お母さんの乳首を口で探して吸い始める。これは本能による反射運動です。
しかしその後、離乳食が始まり、手づかみ食べをして、スプーンを使って、お箸を使って……と、食べ方を覚えていく過程はすべて「学習」です。同じ人間でも、お箸の文化・フォークの文化・手づかみの文化があるのは、食べ方が本能ではなく経験によって身についていくものだからです。
■ 「手づかみ食べ」にも、ちゃんと意味がある
離乳食期、赤ちゃんはよく食べ物を口からこぼします。コップの水でむせます。手を使ってぐちゃぐちゃにします。「汚れるから困る」と感じる親御さんも多いと思いますが、実はこれらはすべて大切なステップです。
特に「手づかみ食べ」は、食べ物の感触を手で感じながら、口の感覚と一致させていくための重要な学習過程です。手を汚すことを避けてばかりいると、偏食や食べ物への過剰な警戒心につながる可能性もあると言われています。
「汚してもいい時間」が、お子さんの食べる機能を育てているのです。
■ 「食べる」は、口に入れる前から始まっている
目の前に食べ物が出てきた時、私たちは口に入れる前に瞬時にさまざまなことを判断しています。硬そうか、柔らかそうか。熱いか、冷たいか。好きか、嫌いか。
これは過去の経験が記憶として積み重なっているからです。固焼きせんべいとハンバーグでは、口に運ぶ量もスピードも自然と変わりますよね。それは意識しているわけではなく、脳が瞬時に判断して口の動きを調整しているのです。
逆に言えば、さまざまな食べ物をたくさん経験することが、食べる機能をより豊かに育てることにつながります。
■ 「噛む」はただ砕くだけじゃない
噛む動作(咀嚼)は、単に歯で食べ物を砕いているだけではありません。
まず前歯でかじり取り(咬断)、奥歯で砕いたりすり潰したり(粉砕・臼磨)、舌が唾液と混ぜ合わせながら飲み込みやすい塊(食塊)を作り上げる……という、複雑な連続動作です。
このとき、舌は内側から、頬は外側から食べ物を支えています。舌や頬の筋肉が正しく動いてこそ、食べ物を奥歯の上にしっかりとキープして噛み続けることができるのです。
これが、以前のブログでお話しした「口腔機能発達不全症」にも深く関わっています。舌や頬の筋肉がうまく使えないと、噛む機能そのものに影響が出てしまいます。
■ 「おいしい」は、健康なお口があってこそ
食事とは、栄養を補給するためだけのものではありません。「楽しいこと」が食事の基本だと私は思っています。
舌の表面にある「味蕾(みらい)」という細胞が、味の刺激を脳に伝えることで「おいしい」と感じることができます。同じ食材でも、温度・香り・見栄えが違えば味の感じ方は変わりますし、誰と食べるか、どんな雰囲気で食べるかによっても大きく違ってきます。
「食事がおいしい」「食卓が楽しい」と感じるための共通の条件は、健康なお口の機能があることです。歯がしっかり噛めること、舌が味をしっかり感じられること、食べ物を安全に飲み込めること。これらすべてが揃って、食べる喜びが生まれます。
■ 「食べる力」は、早いうちから育てよう
このブログでこれまでお話ししてきた「前歯でかじり取る咬断運動」「食事の姿勢」「食材を大きく切る工夫」「よく噛む習慣」。これらはすべて、食べる機能を正しく育てるための大切なアプローチです。
お子さんの食べ方が気になる、食事に時間がかかりすぎる、好き嫌いが多いという場合、もしかするとお口の機能の発達が関係しているかもしれません。
「川口かぼちゃ歯科」では、噛み方・飲み込み方・舌の動きなど、食べる機能全体を見ながらサポートしています。「うちの子の食べ方、これで大丈夫かな?」と気になったら、ぜひお気軽にご相談くださいね。
食べることは、人生の大きな喜びの一つです。その喜びを、一生涯味わい続けられるお口を、一緒に育てていきましょう!
それでは、次回の更新もお楽しみに。
